日・タイ会計基準の比較について
今回は日・タイ会計基準の比較についてです。日本の経理担当者の方からの質問対応や子会社監査の対応時に会計基準の比較が必要になってくるかと思います。今回はその中から収益費用認識にかかる相違点と外貨換算についての取り扱いについて取り上げました。それ以外にも固定資産・棚卸資産などバランスシートにかかる取り扱いについても相違点がありますので注意が必要です。
◆収益費用認識にかかる相違点
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日本 |
タイNPAE |
タイSME |
収 |
収益:実現主義 費用:発生主義(例外として、工事進行基準など) ※ただし、「収益認識に関する新会計基準」への改正がある。2021年 4 月 1 日以後開始する連結会計年度から適用する(早期適用は2018年から)。 |
収益費用:発生主義 ※日本とは若干異なるために下記に詳細を記載 <物品の販売> 次のすべての要件が満たされた時に認識する。 ①物品の所有権が移転したこと ②売り手が物品の実質的支配を保持していないこと ③収益の額を合理的に測定できること ④関連する経済的便益が企業に流入する可能性が高いこと ⑤関連して発生する原価の額を合理的に測定できること <サービスの提供> 次のすべての要件が満たされた時に認識する ①収益の額を合理的に測定できること ②関連する経済的便益が企業に流入する可能性が高いこと ③サービスの進捗度を報告期間末日に合理的に測定できること ④関連して発生する原価の額を合理的に測定できること <要件を満たす場合> 要件を満たす場合には、次の収益認識基準により収益を認識する。 ①完成基準 ②進行基準 ③割賦基準 |
収益費用:基本的には同左(下記の相違点に注意) ①収益認識に関する複数要素を含む取引は構成要素毎に収益を認識する。 ②不動産建築を請負う企業は基本的に工事進行基準に基づいてサービスを認識する。 ③ロイヤルティプログラムの付与を伴う販売取引についても収益認識する。 ※TFRS15号に「顧客との契約から生じる収益」という概念があるが、現時点において適用範囲が不明であるため、従来のSMEの記載を行っている。 |
なお、タイの中小企業向けの会計基準は「タイNPAE基準」であり、多くの日系企業に適用されております。タイSME基準は2020年以降の導入予定となっておりますが、毎年のように延長されており、具体意的な導入時期は今後の状況をみる必要があります。
◆外貨換算まとめ(HR・CR・AR)
Rate |
内容 |
換算 |
HR |
Historical Rateの略。取引発生時のレートで外貨建取引の当初認識や非貨幣項目などの換算で使用する。 |
1.外貨建取引の当初認識(BS/PL計上) 2.非貨幣性項目(棚卸資産・固定資産・前払金・前受金など) 3.外貨建投資有価証券(子会社株式・関連会社株式)など |
CR |
Current Rateの略。決算時のレートで貨幣性項目などの換算で使用する。 |
1.貨幣性項目(現金・預金・売掛金・買掛金・貸付金など) 2.外貨建売買目的有価証券(売買目的有価証券・満期保有債券・その他有価証券)など |
AR |
Average Rateの略。期中平均レートで在外子会社の収益費用などの換算で使用する。 |
1.在外子会社の収益費用 2.在外支店の収益費用(容認規定) 3.有価証券・社債など償却原価法適用時の償却額 ※また、外貨建取引の当初認識にもARを利用することができる。 |
子会社監査時には日本の会計基準との比較が必要となりますが、日本の会計基準も順次変わっており、収益費用認識基準やリース計上基準などが代表的なところかと思います。連結決算を行っている会社では、特に会計基準の相違に伴う利益へのインパクトは業績管理や報告上重要なポイントであり、海外子会社の規模が拡大するにしたがって、より重要性が高くなるテーマになるかと考えられます。
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米国公認会計士(inactive)
社会保険労務士
長澤 直毅
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