タイと日本の税務申告書の比較
今回はタイの税務に関するテーマとして、タイの税務申告書と日本の税務申告書の比較を取り上げます。
12月決算の会社では、12月の月次決算が一段落し、これから法定監査や年次税務申告を進めていくタイミングかと思います。駐在員の方や日本の経理の方がタイの法人税年次申告書(PND50)を確認するにあたっては、日本とタイの税務申告上の違いについて把握しておくと、確認が楽になります。少し長くなっていますが、まとめてみました。
<日本の法人税申告書>
日本の法人税申告書別表4の記載項目は以下の通りです。以下の番号は別表4における番号となります。各調整について、タイで同様の調整があるかどうかをそれぞれ下にコメントを入れています。
【加算】
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2.損金経理をした法人税及び復興 特別法人税(附帯税を除く。)
3.損金経理をした道府県民税(利子 割額を除く。)及び市町村民税
4.損金経理をした道府県民税利 子割額
5.損金経理をした納税充当金
6.損金経理をした附帯税 (利子税を除く 。 ) 、 加算金、延滞金(延納分を除く。)及び過怠税
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⇒上記2.-6.の税金、延滞金等にかかる加算は、タイでも同様の加算調整があります。
申告書のItem9. 1.Corporate Income Tax(法人税の本税について)及び6.Expenses not treated as other expenses(延滞金等について)で加算します。
7.減価償却の償却超過額
⇒タイでも同様の加算調整を致します。減価償却の償却調整額は、Item9. 6.Expenses not treated as other expensesで加算調整します。
8.役員給与の損金不算入額
⇒タイでも同様の加算調整を致します。人件費(給与、賞与、役員報酬、福利厚生費)の中で合理的な金額を超える金額ついては、Item9. 6.Expenses not treated as other expensesで加算調整します。
9.交際費等の損金不算入額
⇒タイでも同様の加算調整を致します。Item9.2. Entertainment expensesで加算調整致します。
【減算】
10.減価償却超過額の当期認容額
⇒タイでも同様の減算調整を致します。Item10.2.10 Expenses other than 2.1 to 2.9で加算調整致します。
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12.受取配当等の益金不算入額
13.外国子会社から受ける剰余金の配当 等の益金不算入額
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⇒タイでも同様の減算調整を致します。Item 10. 1. Revenues granted income tax deduction or exemptionで調整致します。
<タイの法人税年次申告書(PND50)>
上記は日本の法人税申告書別表4との比較となりますが、タイの法人税年次申告書(PND50)の加算・減算調整についてまとめると以下の通りです。以下の番号は法人税年次申告書上の番号となります。
【加算】
Item 9. (Expenses not treated as expenses under the Revenue Code)
- Corporate income tax
法人税そのものは、法人所得税計算上減算調整をします。
- Entertainment expenses
交際費は一定の金額まで損金算入となり、一定の金額を超えると損金不算入として加算調整が必要です。具体的には、年間収益又は資本金のいずれか大きい方の0.3%(上限1,000万バーツ)を超える交際費等は加算調整致します。また、贈答品は1人あたり2,000バーツを超える金額は損金不算入として、加算調整されます。
- Bad debts
貸倒損失は、損金算入について厳しく要件を規定しており、金額によって変わってきます。10万バーツ以下の場合、督促の照明、10万バーツ超50万バーツ以下の場合は、民事訴訟による手続き、50万バーツ超の場合は、民事訴訟を起こし、和解成立について裁判所が承認した場合とより厳しく、通常3ヶ月ほどの期間がかかります。例えば100万バーツの場合で損金不算入処理とする場合の実質的なコストは20万バーツ(100万バーツの貸倒損失の損金不算入に伴う法人税の増加額)となるため、コスト・労力の比較により手続きを実施するかを決める必要があります。
- Reserves
賞与引当金、退職給付引当金、製品保証引当金などの各種引当金は、引当金計上時ではなく、実際の費用発生時に損金算入となります。従って、会計上の引当金は、税務上加算調整が必要となります。
- Expenses from Item8. 15. to 17.
Item8.は販売管理費の記載箇所であり、
・15. Expenses for educational support/教育費
・16. Expenses for learning support and entertainment/育成費・交際費
・17. Expenses for promoting sports schemes/スポーツ振興費
のうち事業と直接関連のない費用については、損金不算入費用として加算調整が必要です。
- Expenses not treated as other expenses
その他の加算調整箇所です。
例えば、税務上の耐用年数よりも短い償却で会計処理をしている場合には、税務上の減価償却費を超える分を加算調整します。税務上の減価償却費に収まる金額については、売上原価の場合Item5.12.、販売管理費の場合Item8.23にそれぞれ記載します。減価償却費についてはタイの歳入法上の最大の年間償却率・最短の耐用年数に留意が必要です。
その他日本との違いとして、タイでは1年以上使用する資産は金額に関わらず固定資産計上をします。実務上は1,000-3,000バーツなどの基準を社内で設けているケースもみられます。また、減価償却費の計算は日割りで行われますので、固定資産の増減がない場合でも、月の暦日数の違いにより減価償却費に変動がみられます。
車両のリースは36,000バーツ/月を超えると損金不算入となりますので、加算調整します。また、棚卸資産の廃棄損については、監査人/税務署の立ち合いをして適切に処理できない場合には、損金不算入費用として加算調整となります。
【減算】Item 10.(Revenues that are granted income tax exemption or expenses that are deductible at greater amount)
- Revenues granted income tax deduction or exemption
益金不算入の収益となります。代表的なものとしては、配当があります。タイ国内法人からの配当については、25%以上の株式を保有し、配当の前後ともに3カ月以上保有している場合、100%益金不算入となります。その他のタイ国内法人からの配当について、配当の前後ともに3ヶ月以上保有している場合、50%益金不算入となります。外国法人については、25%以上保有し、配当前に6カ月以上保有、当該外国において15%以上の税率で課税されている場合には、100%益金不算入となります。
- Expenses that are deductible at a greater amount from actual expenses
一部の費用につき、会計上の金額以上に損金として減算できるものを調整致します。一部の教育、研修費等が該当致します。
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長澤 直毅
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