配当にかかる課税
今回は配当にかかる課税についてです。配当にかかる課税をみるうえでは、配当を支払う側が控除する源泉税と、受け取る側の課税所得の取扱いの両面から考える必要があります。
タイには日本とは異なり多くのサービスなどの支払い時に源泉税の徴収が必要となります。日本では、給与からの源泉所得税や、個人の弁護士・税理士の方への支払いの際に源泉税の控除が必要ですが、それ以外はあまりなじみのないものかと思います。
タイではサービスなどの支払い時に、以下の税率の通り源泉税の控除が必要となります。
内容 |
税率 |
無形固定資産/権利使用料 |
3% |
配当 |
10% |
賃借料 |
5% |
広告費用 |
2% |
プロフェッショナルフィー |
3% |
運送料 |
1% |
請負報酬 |
3% |
不動産譲渡所得 |
1% |
その他サービス |
3% |
上の表の通り、配当を支払う際には10%の源泉税を徴収する必要があります。なお、上記はタイ国内への支払いの場合で、海外への支払い時には税率が異なってきますが、日本への配当支払いの場合は同様に10%の源泉税徴収となります。
配当を受け取る際は、原則として所得として加算することとなり、法人・個人いずれの場合も所得税申告時に所得に加算が必要となります。法人であれば20%、個人は累進課税の税率表に応じた税率が適用されます。また、受け取る側は、上記の10%の源泉税は前払法人税となりますので、法人税を申告する際に既に納税した税額として、控除することが可能です。
ただし、配当にかかる法人税の課税には、以下のような例外があります。
- タイ法人がタイ法人より配当を受ける場合、配当額の2分の1を所得として算入する
⇒つまり、タイ法人でタイに子会社を持っていて配当を受ける場合には、2分の1のみが課税所得となります。
- 配当を行う会社の議決権の25%以上を所有する会社が配当を受ける場合、配当の全額を課税所得から除外できる。
⇒種類株式による議決権の設定を変更していない場合には、出資割合が25%以上の場合に、配当を課税所得から除外することができます。 種類株式で議決権を変更している場合には、変更した議決権の割合で25%以上かどうかの判断をすることとなります。
また、この場合源泉税も免除されるため、支払い側から源泉税(10%)を控除される必要がなくなります。当該源泉税の免除にあたっては、毎月の源泉税申告のP.N.D.53(法人支払いにかかる源泉税)に所定の書式(社名、住所、登記番号、議決権比率、配当金額などを記載)の添付が必要となります。
上記のほか、タイの上場企業がタイ企業から配当を受ける場合、配当の全額を課税所得から除外できます。
ただし、①、②及び上場企業に適用される免税・減税の取扱いは、以下の場合には適用されないため、留意が必要です。
・配当権の付与前3ヶ月以内に株式を取得している場合
・配当権の付与後3ヶ月以内に当該株式を他者に譲渡する場合
・配当を受ける会社が自社と株式の持ち合いをしている会社である場合
つまり、株式の相互持合いをしている場合には、受取配当の免税が適用されなくなりますので、全額を課税所得として含め、支払い側の源泉税控除も必要となります。
なお、タイ法人から配当を受け取る法人がタイの国外法人の場合、それぞれの国の所得税法に基づいて受取配当にかかる申告・納税が必要となります。例えば日本の場合、持ち株割合が25%以上で保有期間が6ヶ月以上の外国法人からの配当は、配当額の95%が益金不算入となります(※海外において当該配当が損金算入される場合を除きます)。
記事の内容が貴社の実態に合わせてどのように取り扱われるかが不明な場合など、お困りのことがございましたらお気軽に下記メールアドレスまでお問合せ下さい。
http://businessmanagementasia.com/jp/home
BM Accounting Co., Ltd.
BM Legal Co., Ltd.
President
米国公認会計士(inactive)
社会保険労務士
長澤 直毅
※本記事に記載の内容は、作成時点で得られる法律、実務上の情報をもとに作成しておりますが、本記事の閲覧や情報収集については、情報が利用者ご自身の状況に適合するものか否か、ご自身の責任において行なっていただきますようお願いいたします。 本記事に関して発生トラブル、およびそれが原因で発生した損失や損害について、BM Accounting Co., Ltd,/BM Legal Co., Ltd.及び執筆者個人.は一切の責任を負いかねます。また、本記事は一部で外部サイトへのリンクを含んでいますが、リンクする第三者のサイトの個人情報保護の取り扱いや、そのサイトの内容に関して一切責任を負いませんのであらかじめご了承ください。