スタッフ採用時の対応(面接時)
前回に引き続き、タイの人事に関するテーマとして、タイでのスタッフ採用時の対応について取り上げます。
前回の通り、スタッフを採用するときの大まかな流れとしては、募集、面接、オファー、入社となります。今回は面接について書きたいと思います。
面接は適性をみるため、複数回行うのが望ましいですが、必ずしも複数回行う必要はありません。特に自分で最終決定をする場合、1回のみで判断するということでも問題はありません。ただし、その1回の面接で判断するための材料を集める必要があります。
私の思うに、面接においては2つの視点があると思います。
・既に自社で明確にしてほしいことがあり、その職務に合った適性、経験を持っている方を探す
・自社で決まっている仕事に限らず、新しい仕事・分野を切り開ける方を探す
「既に自社で明確にしてほしいことがあり、その職務に合った適性、経験を持っている方を探す」場合には、まず職務の洗い出しとそれに必要な経験と適性を確認することが必要です。履歴書だけでは十分な確認は取れませんので、面接の中で質問をする、業務で使う知識や判断を確認する、実際の業務と同じようなことを面接の場でやってもらう(文書やメール作成など)などがあるかと思います。
「自社で決まっている仕事に限らず、新しい仕事・分野を切り開ける方を探す」場合、枠組みにとらわれずその候補者が入社したら自社でどのようなことをしてくれるか、という観点から可能性を探っていくことになります。これは非常に難しいことであり、例えば面接の中で何に興味があるか、などを確認しても本当に興味をもっているかどうかは判断がつきません。一見違う質問と思える質問を投げかけ、本心から興味をもっているか確認する、表情から判断することになるかと思います。また、面接後にフェイスブック、ツイッター、LINEなどのSNSなどを確認することで、判断のヒントが得られることもあります。実際には入社後にまず決まった仕事をこなせるかを確認しながら、他の業務も広げていけるかを確かめていくケースが多いかと思います。ただし個人的には、与えられた仕事が出来るタイプと、自ら課題や計画を設定して行動していけるタイプというのは資質として異なるところも大きいと思っています。
次に、タイで面接をしていてよく聞く回答とその傾向について考えてみました。私自身の経験に基づく傾向になりますので、参考としてご覧頂ければと思います。
1. 家族の仕事の手伝いが必要になり、前職を辞めました。
⇒「勤続期間が短いですが、なぜ短期で辞めたのですか?」「前職の退職から期間が空いますが、どうしてですか?」などの質問をすると、このような回答をきくことがあります。
家族をより大切にする傾向にあるタイでは、家族の事情で退職するケースも本当にあるのだと思います。しかし、本当は別の理由であることも、中にはあります。家族の事情で過去に退職をしている場合、今後も同様の可能性があるので、背景についてはしっかりと確認をしておくことが大切と思います。※日本ではこのような家族構成や出身地に関する質問は厚生労働省の指針で行ってはいけないこととなっています。
また、そのような方は、「前職で何か嫌なことはなかったか」、を聞くことで、本当の退職理由を聞けるかもしれません。その場合、「前職でもし気になっていたことがあれば教えてください。もし当社で改善できることがあれば、取り組みたいので。」というように聞くと、本心を聞きやすいかと思います。もしくは、「私は過去こういった嫌なことが仕事であったのですが、こうやって対応しました。あなたはそのようなことはありましたか?」というようにまず自分の経験から話すことで、自己開示をしてくれることもあります。私自身、この方法は面接だけでなく、スタッフと1対1で話し合うときに使うことがあります。
2. 英語・日本語を使って仕事がしたいので、応募しました。
⇒語学(英語や日本語)を使って仕事をしたい、というのは応募理由を聞くとよく言われることがあります。「それでは、バンコクには様々な外資系企業や日系企業がありますが、そのなかでなぜ当社を選んだのですか?」と聞くと明確な答えが返ってこないことがあります。
面接は一方的な選択ではなく、お互いが選ぶものですので、そのようなケースでは、自社についてより詳細な説明をするのがよいかと思います。そのうえで、改めて自社の良いところを聞き、会社を選ぶときの基準などと照らしてきちんとした考え方をもっているかを確認すると判断しやすいのではないでしょうか。
また、語学をやりたいと本気で思っていれば、今の環境でも自分で勉強をしているなどの姿勢がみられるはずですので、今実際に取り組んでいることも聞いてみるとよいかと思います。
3. 経験をもっと積みたいので転職したいです。
⇒「なぜ会社を辞めたのか?」、「当社への応募理由は?」などの質問をすると、良く聞くセリフです。
経験を積みたいのは、非常によいことで、決して悪いことではありません。
経験を積みたい、という考え方は、時に自分中心に物事を考えることにつながってしまいます。
ドラッカーのいう石切り職人の話しをもとにすると、人は
① 生活・お金を稼ぐことを目的として働く
② 技術・能力を高めることを目的として働く
③ 人・社会の役に立つことを目的として働く
の3つにわけられます。
① 、②は突き詰めると自分を中心に考えており、③は自分の周囲の人(家族、同僚、顧客)や社会を中心に考えています。
100%③の考え方だけの人は少ないとは思いますが、顧客への対応や会社内でのチームワークに影響することだと思いますので、どの傾向が強いかということを確認しておくとよいかと思います。
次回は募集要項とオファーについて書きたいと思います。次回以降もぜひご覧ください。
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長澤 直毅
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